エンジニアは業務時間外に勉強すべきかの話

他社社長が盛り上がってるみたいなんですが、そこの言説だけが広がっていってもアレだなぁと思ったので、単に自分がやってきた経験値とかを書いてみた。銀の弾丸欲しい。

お前誰よ

  • 零細ITシステム会社経営
    • 従業員5人、エンジニア数だと6人(私自身が含まれる)
    • 会社は設立して4年弱
    • 自社サービスを作っているが、今のところの収益構造は受託・SESが100%
  • 10年ぐらい名古屋でコミュニティ活動に関わってきている(ただし、ここ2年ぐらいは忙しすぎて、ほぼ勉強会に行けてない)

色々やってきて至った基本的な考え方

会社という組織を前提とするのであれば「雇用契約」による利害関係で考えるのがシンプル。

  • 会社は利益を上げたい
  • 利益を上げる手段としては、良いエンジニアが必要(それだけではないが、この話題の本筋ではないので割愛)
  • 良いエンジニアを育むには学習が必要

目的は利益であって、エンジニアの勉強は手段。エンジニアが勉強すべきかみたいな話をしたら、そりゃあ、「エンジニアである以上は生涯学習すべき。ただし、プライベートに勉強を強制させるの(無償労働)はあかん」という一般論にしか終着しない。

「かくあるべき」という話にせず、人事評価(賃金)の話にするのが分かりやすくなる。

  • 業務を遂行する上で必要最低限の教育を、賃金を支払ったうえで行わなくてはならない
    • 賃金が発生する以上、学習成果が上がっているかを人事評価に反映させることは正当となる
  • エンジニア個人の学習成果が収益に直結するのであれば賃金に反映し、新たな事業展開に繋がるような場合はプロジェクトメンバーに抜擢するとか、人事的な面で評価する

これを前提に、会社としてはこういう技術が欲しいとか、こういう人材が不足しているということを伝えて、賃金に反映させる。賃金に繋がるとなれば、学習意欲に繋がって資本主義ヤッターとなる。

当然ならない場合もあるが、賃金に反映されない理由としてはわかりやすい。賃金を払うための収益が改善されないだから、割増する理由がない(これも単純化しすぎたらあかんところではあるけど、割愛)。

強制される勉強の成果は上がらない

サラリーマンプログラマーの時代には、こういうことをやっていたがうまくいかなかった。

terurou.hateblo.jp

会社を作ってから、ある程度の選別をして採用を行ってきているが、すべてのケースにおいて合格点となることはない。そのため、社員教育はやるしかないという意識で取り組んできている。ただ、正直なところ、期待する成果は上がっていない。

振り返ってみて、

  • 本人に興味・素質がある領域や教育を行いやすい領域は伸びるが、そうではないところはほぼ伸びない
  • 期待値が高すぎた

という、当たり前だよねという思いに至っている。

「強制される勉強」というのは「本人に興味がない」とか「学習成果が上がってるように感じない」というところから来るものかと思う。

「本人に興味がない」ケースで、人事評価で釣れないのであれば、これ以上は会社からインセンティブを与える手段はない。ただ、本人に聞いても「やる気はあります!」みたいな答えしか当然出てこないので、外部から「やる気」を評価することはできないように思う。

「学習成果が上がってるように感じない」については、学習カリキュラムやゲーミフィケーションなど、改善余地はあると思う。自社に対してだけ考えると、正直私の力不足(時間不足)感が強いので、やり方を見直さないといけないなぁとは考えている領域にはなっている。 ただ、学習成果の面において、「マニュアル化」「自動化」については、成果が見えやすいと思っている。マニュアルには即効性のある内容が書かれている。自動化は厳密には学習ではないのだけど、そもそも覚えなくてもよい状況にすれば、成果はあがる。

まとめる

割と殺伐としたまとめになるが、雇用契約に基づいて、システマティック・資本主義的に考えるのが素直だと思っている。

端的に「エンジニアは業務時間外でも勉強すべきか」という問いに対して、経営者としての立場の回答は「強制は逆効果になるからNG、インセンティブを明示して社の要望を伝えることは必要」となる。

  • 期待しすぎない
    • ある程度の誘導はできるにしても他人が自分の期待通りに動くわけがないし、銀の弾丸もない
    • 高すぎる期待値は精神衛生上良くない結果になりやすい
  • マニュアル化、自動化等の属人性が排除できる部分を対処していくことで底上げを図る
  • プライベートでの勉強の有無に関係なく、会社の利益につながる人間(端的に業務遂行能力の高い人間)を人事的に評価する

社員のやる気を上げる手段は色々提供することは可能だけど、最終的には、やる気とかいうのは運要素だと考えた方が良い。そういう人が採用できるとも限らないし、興味分野はコロコロ変わるし、ゲームやりたくなったりするし、結婚したりとかで状況は常に変わる、人間だもの。

追記: 「期待しすぎない」は「地に足をつけろ」「着実にやれることをやる」みたいなニュアンス。

おまけ

うちは就業規則GitHubに公開しているので、エンジニアの勉強に関連する制度の現時点の評価を書く。

EmployeeHandbook/005_福利厚生規程.md at master · DenkiYagi/EmployeeHandbook · GitHub

  • 書籍購入補助
    • ほぼ使われていない。私がTwitterや社内チャットで面白そうというワードを見ると、だいたい即購入して社の図書として積読している。社員はそれを借りていくのが普通になっているので、形骸化してしまっている。
  • セミナー補助(勉強会参加補助)
    • 年に数回程度しか使われていない。これは社員が近場の勉強会に行く頻度が高いので、単に費用が発生しない等の理由と思われる。
    • 有償セミナー・トレーニング等については今のところ実績がない。行きたい・行かせたいという具体的なところまで決まりきってないだけ。

その他、社員から機械学習ぶん回したいからサーバーと空調をどうにかしてくれみたいな要望が上がってきたが、マニー・設置スペースの両面で都合がつかなかったので、直近は見送りになっている。